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羽賀さんのレンコンはこのシールが目印。黒いシールは「金澄(かなすみ)系」と呼ばれる一般的な品種で、赤いシールが「在来種」。ロゴとブランド名は、お世話になっているデザイナーさんがプレゼントしてくださったそうです。

自然栽培のハス田の様子

まずは収穫の様子を見せていただけるとのことで、我々取材班も同行させていただくことに。羽賀さんが「ついにね、去年作ったんです!ほぼオーダーメイドの冬用全身スーツ!」と言って見せてくださったのが、こちら…

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…か、かわいい!!
そして、とってもうれしそう!!
「これで真冬も安心なの。今の時期ならまだ、少し汗ばむくらい」
と、羽賀さん。

後ろに見えているのが、羽賀さんがレンコンを育てているハス田(はすだ)。
近くで見ると、こんな感じ。

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茎や葉っぱは枯れていますが、土の中のレンコンは生きています。羽賀さんのハス田は、収穫する時までずっとこのまま。茎も葉っぱも切りません。

ちなみに、夏のハス田はこんな感じ。

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手前のピンクの花は「在来種」、奥の白い花は「金澄系」。2品種は分けて栽培されているわけではなく、在来種は自然に生えてくるとのこと。写真は羽賀さんご提供。

冬の今とは全く様子が違って、植物園のようですね!ハスの花もきれい。この状態でもレンコンの収穫はできるとのことで、羽賀さんはこの生い茂る葉っぱをかき分けて作業をされるそうです。時折香る、ハスの花の匂いに癒されながら。

「水堀り」の相棒、水圧ポンプ

燃料を左手に、収穫後のレンコンを入れる舟を右手に持って、ずんずんとあぜ道を進む羽賀さん。

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レンコンを掘る際に使用する、「水圧ポンプ」に燃料を入れます。

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そして、スイッチオン。
エンジン音が鳴り始め、しばらくすると、ハス田の真ん中あたりでブクブクブク…。

そうです。この水圧ポンプとつながっているホースの先は、ハス田の真ん中あたり(前回作業を終えた場所)に沈んでいるんです。正確には「収穫作業の最後に沈めている」そうで、「これを最後しっかりやっとかないと、大変なことになる」とのこと。ホースの先からは勢いよく水が噴射されているので、エンジンをかけたとたんに暴れちゃうんでしょうね…。

レンコンの収穫方法は大きく分けて2つ。水を抜かずに掘り起こす「水掘り」と、水を抜いて鍬(くわ)や熊手で掘る「くわ掘り」で、業界的にも水掘りが主流。その中でも羽賀さんは、最初から最後まで大きな機械を使わずに、ひとつひとつ手掘り。この水圧ポンプを相棒に、いよいよ収穫作業が始まります。

人も鳥もみんな、食べたい気持ちは一緒

ハス田の水の深さは場所によって違うそうで、「ここは比較的浅いハス田」とのこと。小柄な羽賀さんでも、膝上くらいの深さです。

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まずは地中に埋めたホースを取り出し、右手に持ちます。そのホースの先から勢いよく噴射する水をハス田の底に当てて泥をどかしながら、左手でレンコンのありかを探っていきます。噴射する水をハス田の底に当てるため、自然と胸の辺りまで浸かる体勢に…。

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これは大変…。特に冬!今!絶対寒い!!

「でも、まだ氷も張ってないから、マシな方ですよ」
と、笑う羽賀さん。

しばらく時間がかかるのかな…と思っていたら、あっと言う間にレンコンが!早い!

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手順としては…
①ハス田の底の泥を水圧で退かしながら左手で土の中を探り、レンコンを見つける。
②見つけたレンコンは左手でその根元までたどり、根元で折る。
③途中で折れないように、いくつかの節が連なった状態で丁寧にすくい上げる。
④そのまま水面に浮かせおいて、後でまとめて舟に積み上げる。
…という感じ。

そして、収穫作業中の羽賀さん、時々「鳥に食べられてましたー!」と苦笑い。

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そうなんです。鳥たちが食べちゃうんです、レンコン。「えぇ!?土の中に埋まってるのに!?」と思いますよね?白鳥もカモも水中に頭を突っ込み、土の中のレンコンをついばんで食べるんですって。

でも、羽賀さん、鳥たちのことを「100%悪者」のようには言わないんです。「まぁ、人も鳥もみんな、食べたい気持ちは一緒だからね」と。特に鳥よけのネットを張るなどもせず、見つけたら追い払うくらいとのこと。優しい…。

手掘りレンコンは、感謝の宝探し

「ここ、きりのいいところまでやるね。寒いのにごめんね」と我々取材班を気遣いながら、収穫作業を進める羽賀さん。

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今日は私たちに収穫の様子を見せてくださるためだったので、作業時間は30分ほどで終了されましたが、いつもは水圧ポンプの燃料が切れる、約2時間を目途に作業をされるそうです。なんてハードな作業なんだろうと思いますが、羽賀さん曰く、「レンコンは見えないから面白い。宝探しみたいで、やり始めると夢中になってしまう」とのこと。

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最後は舟にレンコンを集めます。

掘ってみないと分からないこと多く、1回の作業で収穫できる量もまちまちとのこと。今回はあっと言う間に1本目が出てきましたが、この1本が出てくるまでに相当苦労することもあるそう。

「慣行栽培をしていた頃は収量がもっとたくさんあったから、収穫は機械を使って、機械が掘り起こして浮いてきたレンコンを集める感じ。それはそれで収穫の喜びはあったけど、今の方が1本1本確かめながら、有難さを噛みしめながらやれているように思います。掘ってみないと分からないからね。いいものが出てきた時は、感謝の気持ちでいっぱいになります」
と、羽賀さん。

レンコン解説!食べる部分は根っこ?

さてここで、収穫直後のレンコンを見ながら、レンコン解説です。

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この写真で、羽賀さんが左手でつかんでいる部分が根元。レンコンはここから羽賀さんの右手の方に向けて伸びていきます。先端にあるとがったものが、伸びていく部分の「芽」です。節からにょろっと長く伸びているものは「葉柄(ようへい)」と呼ばれる茎の部分で、空気の通り道。この先に葉っぱがあります。そして、節から出ている黒い糸状のものが根っこです。ちなみに私たちがおいしく頂く部分は根っこではなく、「地下茎」なんですよ。

さて、羽賀さん、レンコンを乗せた舟を引いて、あぜ道を歩いてトラックへ…

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…と、思いきや「入った方が早いね」と言い、ハス田の中をのっしのっし。

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泥に足が取られて体力を消耗しそうですが、「地面を引きずるより楽」とのこと。そして「これはね、体幹が鍛えられるよ」と。分かります。羽賀さん、すっごく姿勢いいですもん。

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レンコンをトラックに積んだら、洗浄作業を行うご自宅の作業場へと向かいます。

洗浄も地下水でひとつひとつ丁寧に

ご自宅脇の作業場にレンコンを運び込んだ後は、井戸水を使って洗います。ひとつひとつ手で泥を落とし、茎や根っこを包丁で取り除き、最後に穴に泥が付いていないか確認します。

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羽賀さんの後ろに「自動洗浄機」も写っているのですが、これは昔、慣行栽培で大量に収穫していた頃に使っていたものとのこと。

「その頃はとにかく量が多いから、ここ一面に水を張って、機械で洗ったものがここに自動的に落ちるようになってたんです。でも自然栽培に変えて収量が減ったから、桶で十分になって、使わなくなりました」
と、羽賀さん。

収穫から出荷まで、ずっと手作業。
ひとつひとつ、丁寧に進められていました。

暑い日も寒い日も

収穫の様子を見せていただき、羽賀さんは終始楽しそうに作業されているものの、「これ、めちゃくちゃ体力要るだろうなぁ…。悪天候の時はつらいだろうなぁ…」と思い、お尋ねすると…

「やっぱり寒い時期はね、家を出るのが億劫でね…(笑)」
と。

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玄関に横たわる装着前の全身スーツ。手袋は替えが利くように市販のもので、水が入ってこないよう、自転車のタイヤのチューブでぐるぐる巻きに固定してあります。

羽賀さんの収穫は、注文に応じてその都度行うスタイル。「お客さんの希望にはなるべく叶えたい」と、要望に合った量を良いタイミングで出荷できるよう、暑い日も寒い日も、氷が張っていても、雪が積もっていても収穫に出るそうです。主な出荷先は、小売りだと私たちナチュレ片山がメインで、その他はレストランさんや個人の方とのこと。

自然栽培を始めたきっかけ

かつては慣行栽培でレンコンを作っていた羽賀家。それを2015年に無農薬・無施肥(後に自然栽培)に切り替えた羽賀さん。それはなぜ?収量も減るし、余計に大変になるんじゃないかな…。そんな風に思っていたのですが、羽賀さんからは意外な答えが返ってきました。

「正直私にとっては、化学肥料や農薬散布がとてもつらかったんです。使わなくていいのであれば、肥料や農薬を使わずに育てられたらいいなぁと、常々思っていて…」

「つらいなぁ…」と思いながらも、収量が安定する慣行栽培を続けてきた羽賀さん。転機が訪れたのは、長年お世話になってきた千葉県のレンコン育種家さんの息子さんが、「新たなレンコン作りを始めた」と知ったことでした。それが「レンコンの無農薬・無施肥栽培(後に自然栽培)」だったのです。

「彼の話を聞いて、“できるんだ!”とびっくりしたんです。私もずっとしたいと思っていたけれど、“肥料と農薬がないとレンコンは作れない”というのが業界の常識みたいになっていたから、“すごい!できるんだ!”と思ってワクワクしました」

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ほどなくして、その方と同じ方法で無農薬・無施肥に切り替えた羽賀さん。農薬を使わなくなったせいで、ザリガニが大量発生してレンコンの芽を食べ尽くしてしまったり、畦に穴を空けてしまったりして、ご自宅裏のハス田がダメに。他のハス田では浮草が大量に生えて日光を遮断し、上手くレンコンが育たなかったなど、さまざまな問題が発生したそうです。

「でも、ハス田の状態もだんだん変わってきたし、私もだんだん分かってきた。どこまでがダメで、どこまでがいいのか」
と、明るく語る羽賀さん。

自然栽培を始めてしばらくすると、農薬を使っていた頃には姿を見せなかったウシガエルが復活してザリガニを食べてくれたり、浮草も放っておいてもちょうどいいくらいで収まったりするようになったそう。(人間が余計な手を加えなければ、自然は勝手にバランスを取るようになる…ってことなのかな…)

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春の羽賀さんのハス田。茶色く土のように見えるのが浮草。この後に大雨が降って、こんなに広がっていた浮草がスッと無くなったそうです。写真は羽賀さんご提供。

そして、羽賀さんが無農薬・無施肥に切り替えて3年目の2017年、ナチュレ片山がオープン。「こだわりの野菜を取り扱ってもらえると聞いてすぐに行った。社長さんの将来構想を聞いて、素晴らしいなぁと思ってワクワクしました」と、当時を振り返る羽賀さん。そして、オープン翌年の2018年からずっと、長いお付き合いをしていただいています。

「自然に沿ってやっていると、こうやってうまくいく気がします。有難いです」
と、うれしそうに語る羽賀さん。

私たちナチュレ片山も、良きタイミングで出会えたことに感謝です。

自然体の暮らしを支える、レンコンのたくましさ

そんなこんなで、羽賀さんはとても自然体。
「お客さんを喜ばせたい」と、真冬でも収穫に行くけれど、「あまりに天気がひどい日は、行きませんけどね」と笑い、1日のスケジュールや年間スケジュールをお尋ねしても、「その時の天気や注文の状況、他の予定の具合によって変わりますんでね~」と、特には決めていない様子。

そして、最後までお話を聞いて分かったのは、この自然体の羽賀さんの暮らしを支えているのは、「レンコンのたくましさ」だということ。とにかく、レンコン(ハス)の生命力がすごいんです。なんたって、縄文時代の遺跡から見つかったハスの花の種が2000年の時を超えて開花し、今いろんなところでその子孫が元気に花を咲かせているくらいですから(詳しくは「大賀ハス」で検索!)。

ハスを食用として改良されたレンコンも同じで、強い生命力を持った植物です。基本的に多くの水を必要としますが、昨今の猛暑・水不足でも枯れることはなく「大丈夫だった」とのこと。また、レンコンは土の中に埋まっているので保存が利き、種を植えなくても、今すでにあるものから分裂するようにどんどんと生まれる。

「田んぼの中に何カ所か“掘らないところ”を“種場(たねば)”として決めておいて、それを種レンコンにするんです。そこから自然に広がるものもあるし、そこにあるレンコンを春に“種レンコン”として掘り起こして他の場所に植えることもある。でも、必要になったら掘って出荷してしまう。それでもまだ、別に残しておいたところで育っているものがあるからね、なんとでもなるの(笑)」
と、羽賀さん。

おぉ…すごい…!
完璧な循環型じゃないですか!
そして、なんて柔軟な野菜なんだ!レンコン!!

「レンコンは毎日世話をしないと枯れてしまう、なんてこともないからね。ずぼらな私にちょうどいいんです、ありがたいことに」
と笑う。

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「おいしいから食べる。おいしいから買いたい」

終始、自然体でおちゃめな羽賀さん。最後に改めて、初めて羽賀さんのレンコンを食べた時の味の濃さやおいしさに驚いたことを伝えると、こんな風に返してくださいました。

「野菜本来のおいしさなのよね。びっくりするよね。でも、ナチュレ片山さんに来るお客さん、みんなそうだと思う。おいしいから食べる。おいしいから買いたいのよ。私も一緒だもん」

羽賀さんはおいしいものが大好き。お料理も好きで、自分で考案されたレンコンレシピも豊富。おいしいものを求めて、ナチュレ片山にも長年お客さまとして通ってくださっています。

確かに、みんな「おいしいから食べる」んだ。

私たちナチュレ片山の大切な部分に触れてくださり、ありがとうございます。

羽賀さんのレンコン、皆さんもぜひ食べてみてください。「おいしいから食べたい」と、素直に思えるはずです。

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(2025.12.10取材)

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ナチュレ片山 本店

025-270-1188

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